地元の小さな会社に事務職として入社した。トップは、おじいちゃん。(20歳くらいの頃、70歳ぐらいだった)
「今度入った事務員さんはコンピュータができるんだよ。」
おじいちゃんは、ガハハハハと笑いながら社内や取引先一人一人に紹介してくれた。
コンピュータは納期が間に合わず、これから入ってくるとのこと。おじいちゃんは、その間ずっと「コンピュータがくるんだよ」とうれしそうにしていた。
待ちに待ったコンピュータが届いた日。「コンピュータができる私」は、おじいちゃんの期待を一身に受けていた。
「設定方法は、業者さんと直接やりとりすんだぞ。ガハハハハ」
その声を聞きながら固まる私。てっきりワープロかパソコンが届くものだと思っていたのだが、見たこともない機械が目の前にある。キーボードがない…。何も書かれていないボタンが50個くらい並んでいるだけだ。
業者さんの話を聞くと。
「シートがあり、それをコンピュータにセットする。シートは5枚になっていて、切替ボタンを押すと切り替わる。今は何も設定されてないから、まずシートに商品名を手書きする。そして、シート+ボタンごとに商品登録する。」
1枚目に平仮名が書かれているが、いわゆるキーボードの配列ではなく、50音順に並んでいた。
一応、思っていたのと違うことと、このタイプは触ったことがないので、できるかわからないことは伝えてみるが、「コンピュータできるんだから大丈夫だ」と一蹴されてしまう。
とにもかくにも、やらねばならないので必死に取り組んでみるものの、慣れない商品名と操作に四苦八苦していた。
長らくいる事務員さんにも、「コンピュータできるんでしょう~?もっと早くできるかと思ったのに」とため息混じりに言われてしまう。
コンピュータと一括りにされても困るのに。